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【コロナ】ワクチン2回目接種。それは安心した後にやってきた。

タイトル-ワクチン接種2回目のお話

「あぅあぅあぅ.....」

深夜の12時過ぎ。それは思いがけず襲い掛かってきた。何もなくてホッとした。そんなふうに思ってしまったことに今さらながら悔やんだ。体中が熱い。それなのにどういうわけか寒いのだ。全身に湧き起こった異変に、ただ布団の中でガクガクと歯を鳴らし身震いするばかりだった。

8月24日。コロナワクチンの2回目接種のため、会場を訪れたのは午前10時を少し回った頃だった。キャンセル待ち登録の記事を以前書いたが、その直後、首尾よく1回目の接種ができたのだ。 

あれからちょうど4週間。会場に到着すると、心臓がバクバクした。2回目は副反応が出やすいだの、高熱が出やすいだのなんだのと、要らぬ情報ばかりを吹き込まれたからだ。

問診で前回での副反応について問われたとき、

「37度の熱が出て... 1時間ほどで下がりました」

と答えると、医師はあからさまに表情を曇らせる。同時に、かすかにではあるけれど「え」とも聞こえた。いや、気のせいだったかもしれないが、「え」と言いたいのはこちらのほうだった。

副反応の説明を受け、医師の「何か不安なことは」という問いかけに、

モヤモヤするものが脳内でうごめく中、こう告げた。

「副反応が... 不安です...」

あんたのせいで余計に不安になったよ、とも言えずに。

 

それからはとてもスムーズだった。あまりの円滑さに心の準備が間に合いそうもない。看護師が「じゃ、打ちますね」と訊いてきたが、ハイと答えようとしてその声は完全に裏返ってしまった。

前回は接種後、15分間会場に待機した。しかし今回は20分経っても席は立たなかった。ワクチンのせいなのか緊張のせいなのか。頭がフワフワする。30分経ったら席を立とう。その時ふらついたらまた座ろう。そう考えながら何度もスマホをチラ見した。後から来た接種済者が、脇から後ろからどんどん席を離れていく。いいかげん大丈夫だろうか。そう思ったころにはとうに40分を経過していた。

心配をよそに体は至って正常だった。さっきまで抱いていた不安はどこかへ吹き飛んだかのように思えた。いや、だめだ。これからだ、出てくるのは。そう今一度気を引き締めると、自宅に向けて自動車のハンドルを握った。

 

帰宅すると、妻と息子が心配そうに「どうだった」と聞いてきた。できるだけ明るく「なんてことなかった」と答えた。それはさながら自分自身への不安を拭い去るかのようだった。

ワクチンを接種した日と、翌日以降2日目までに副反応が出た場合は、公休扱いになる。平日にもかかわらず、一日をのんびりと過ごせるのはそのおかげだ。前回は打ってから1時間後くらいに熱は出た。ところがこの日は2時間経っても3時間経っても発熱しなかった。たまにはのんびりと家で過ごすのも悪くはない。夕食を終えた後も、息子と動画鑑賞したりと、ゆっくりくつろいだ。もう副反応はないだろう。ああ、なにもなくて良かった。2回目が無事終わって本当に良かった。

 

「おやすみなさい」と息子が声をかけてきた。明日は仕事だ。今日は早めに寝よう。毛布をまとうように横になると、次第に眠りについていった。

しかしこれで終わるはずなどなかった。深夜の12時過ぎ。それは思いがけず襲い掛かってきた。訳も分からず体が震える。妙な寒気がして歯と歯がカタカタと鳴り出した。暑くて汗が出ているのに体は震えることをやめてくれない。これを悪寒とでもいうのだろうか。全身が熱い。なのに身体は寒い。気が付くともだえるように叫ぶように言葉を発していた。

「あぅあぅあぅ.....!」

ただならぬ様相に、眠っていたはずの家族が寝室に入ってきた。「どうしたの、どうしたの」と息子の叫び声が耳に入ってきたけれど、歯が勝手にガタガタしてまともにしゃべることができない。毛布を掛け直してみても、扇風機を止めても寒気は治まらない。なぜだ。どうして悪寒が出るのだ。扇風機に当たりすぎて体を冷やしてしまったのだろうか。それとも昼間に食べ過ぎたアイスのせいなのか。その答えは、妻が取ってきてくれた体温計で判明した。

38.5度。

のんびりと過ごした昼間とは比べられないほど、体温は上がっていた。それはまぎれもなくワクチンの副反応だったのだ。

体を毛布でくるんだ。しかし他に何もすることがない。解熱剤を口に含むことをおいて他に、何もできなかった。気持ちが悪い。つらい。発熱とはこんなにもつらいことだったのだろうか。もうろうとする意識の中であの時の事を思い出していた。それは1年半程前のこと。ちょうどコロナが流行る直前の頃のことだった。

 

今日は残業だ。いや、いつもか。今日中にここまでは終わらせねば。なにか気だるさを感じながらも仕事は順調に進んでいった。翌朝。ベッドから降りようとするとめまいがする。37.4度。昨日からの気だるさの原因が体温計を見て分かった。しかし今日は大事な講習会が午後にある。これくらいで休むわけにはいかない。内科の診察券を手に取ると、いつも通り家を出た。

風邪でしょう、と医師は言った。薬を携え車を講習会場に走らせる。診てもらったのだからと、わずかながら安心感があった。しかし会場に着く頃にはひどいありさまだった。冬なのに火照った顔に流れ落ちる汗。頭がぼーっとして、講義の内容など何一つ頭に入らなかった。

ふらふらの体でやっとの思いで帰宅したのは午後も8時を回ったころ。体温計を見て驚いた。38.6度。医者の薬を飲んでいたのになぜだ? 食欲もないのに無理にめしを口に詰め込んだ。疲れが溜まっているのかもしれない。ゆっくり休みさえすれば、きっと明日には熱は下がるだろう。そう思いながら床についた。

翌朝、体温は下がるどころか益々上がっていた。こんな高熱、今までに出た記憶はない。ただでさえクラクラするのに、余計に頭がおかしくなりそうだった。

 

あの時は本当につらかった。まったく薬が効かなかったのだから。間違ってラムネでも飲んでしまったのかと思いたくなるほどに。39度超えが何日も続いたあの日。もうこれっきり熱が下がらず死んじまうんじゃないかと思ったあの日。ようやく熱が下がり、地獄のような1週間を乗り越えたとき、もうどんな高熱だって怖くなんかないと思った。

 

夜が明けた。熱にうなされて、ろくに眠れやしなかった。もう仕事どころの話ではない。いや、熱が出れば公休だっけ。解熱剤が効いたのか夕べよりはいくらか気分はマシだ。そう思ってベッドから立ちあがったその時。今度は膝が痛むことに気が付いた。関節痛。接種会場で渡されたパンフレットに書かれていたことを今さらながら思い出した。 

結局、その日も熱は下がらないままだった。上司に予め連絡を入れることにした。明日も出社できないかもしれません、と。

 

翌朝。なぜか布団が心地よく感じる。目覚ましが鳴る前に自然と起きられたのは久しぶりだ。ぐっすり眠れたのか、とても気持ちがいい。体温を測ってみると、案の定、平熱に戻っていた。熱がないとはこれほど気持ちのいいことなのか。膝が痛くないことがこれほど快適なことだったのか。今なら町内一周でもできそうなくらいだった。あのつらかった地獄の1週間に比べたらなんと他愛のないことか。体調が良いと気分も良くなる。すたっとベッドから降りると、足取り軽く階下へと降りて行った。

そこには妻がいた。息子も今日は起きていた。思えば熱を出して家族には本当に心配を掛けてしまった。

「もうだいじょうぶなの?」と声を掛ける妻にこう答えた。

 

 

ワックチンっ! まだくしゃみが出るけど、大丈夫だよ、オカン

 

...しまった。オチにしては外し過ぎだ。そう思ったが時すでに遅かった。どうやら熱は脳ミソに後遺症を残してしまったらしい。

息子は黙ったまま、みそ汁を「ズルズル」とすするだけだった。

 

最後までお読みくださり ありがとうございました。

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